タビグルマ雑記帳

仕事で触れることが多い「旅」と「クルマ」を中心に、いつも感じていることを書き綴っています。

こぼれ話シリーズ:番外編〜アルテガGTの記憶〜

主に旅行関係の仕事で記事にならなかった話を披露する「こぼれ話シリーズ」ですが、今日はちょっと趣向を変え、クルマ関連の仕事でのこぼれ話を書いてみようと思います。(もちろん守秘義務に抵触しないものです)

 

今日の話題はアルテガ。

 

ドイツの新興スポーツカーメーカーとして、クルマ用の電子システムサプライヤー「パラゴン」の会長が2006年に設立した会社です。

 

翌2007年のフランクフルトモーターショーで、同社初のモデル「アルテガGT」を発表しました。

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画像:Artega公式ウェブサイト

 

2011年に入ると日本への導入に向けた準備が進められ、同年夏頃には都営大江戸線赤羽橋駅近くに正規販売店がオープン。日本での販売価格は約1200万円と安くありませんでしたが、新興メーカーが作った2シータースポーツカーとして、それなりに注目されていました。

 

残念ながら、アルテガ社は2012年に破産法の申請を行い、これに伴って日本での販売拠点も消滅してしまいました。

 

破産法申請後、パラゴンがアルテガを買収する形で従業員を引き取り、アフターサービスも継続しましたが、新車製造は休止していました。

 

日本では極めて短い期間しか表舞台に立っていなかったアルテガですが、私が携わったのは日本での正規販売店のオープンと1号車の納車についてのニュースリリースを代筆するという記念すべきタイミングでの仕事。

 

販売店のオープン前後には店舗に足を運び、社長さんやマネージャーさんたちから色んな話を聞いたほか、展示されていたアルテガGTのシートに座らせてもらったり(試乗用のクルマはまだなかった)、エンジンルームを見せてもらったりしたものです。

 

特に印象に残っているのがインテリア。

 

パワーウインドウのスイッチが、手で回すハンドルの形(別名パワフルウインドウwww)だったのです。

 

ドイツ人が作ったとは思えない遊び心に心底驚きました(笑)

 

また、1号車の納車時には自動車メディアも呼んで、大々的なセレモニーを行い、その取材という形で立ち会うこともできました。

 

オーナーさんは「偶然、店の前を通ったときに見かけて一目惚れ。すぐに引き返してお店に来ました」などとアルテガの出会いについて照れくさそうに語ってくれました。

 

1200万円のクルマを衝動買いできる財力がどこから来ているのか、非常に気になりましたが、さすがにそれは聞けませんでしたwww

 

 

この記事を書く前にカーセンサーやgooなどで検索してみましたが、残念ながら今日の時点で売りに出ているアルテガGTはありません。(少なくともネット上に売りに出ているという情報はありませんでした)

 

ちなみにアルテガGTに使われているパーツの多くはフォルクスワーゲン製。エンジンも3.6L V6エンジンも、6速DSGもフォルクスワーゲンのものですから、部品の心配はほぼありません。

 

信頼性に問題があって売れなかったというよりは、ネームバリューの低さで販売が伸びなかった面が大きいので、ひょっとしたらアルテガGTを所有していると値段が落ちないどころか、投資した分を回収できちゃうくらいになるかもしれませんね。

 

颯爽と現れてすぐに消えてしまった、まさに流れ星のようなメーカーでしたが、現在は車両製造を再開し、電動スポーツカーメーカーとして生きています。

 

立派なウェブサイトもあり、アルテガGTのEV版とも言えるScaloと、四輪バギーのようなKaroの2車種が紹介されています。

 

消えていったニッチ系スポーツカーメーカーも、EVにシフトすることで生き残る道があるのかもしれませんね。

 

それにしても、流れ星のようであっても新興メーカーが出てくるあたりに、ヨーロッパの自動車文化はなんて懐が深いんだと思った次第。

 

それでは今日はこの辺で。