他メディアからの問い合わせ:「海外旅行保険の落とし穴は?」に辟易した話
私が旅行業界誌の編集部に身をおいていた頃、他のメディア、特にテレビ番組の制作会社から問い合わせをいただくことがありました。
内勤の編集者として仕事をしていたときには、そういった問い合わせの電話を私が受ける機会は少なくありませんでした。
例えばテレビ東京の『ワールドビジネスサテライト(WBS)』。
「旅行商品のオンラインでの流通について編集長にインタビューしたい」という依頼でしたが、当時の編集長は表に出たがらない人で、そちら方面に詳しい方をご紹介して終わりになってしまいました。
その対応を見ていた我々下っ端は、この編集長は本気で自社媒体の名を売る気があるんだろうか?と疑問に思ったものです。
同僚と「日本のどれだけのビジネスマンがWBSを視聴していると思ってるんだ!」と憤慨していました。
そんな思い出のうちの1つに、テレビ朝日の『報◯ステー◯ョン』の制作会社からの問い合わせがありました。
ちょうどその前日、アメリカで日本人のツアー客を乗せたバスが事故を起こし、死傷者が出たというトピックがあったのです。
ツアーを催行した旅行会社は、規定に則って迅速に対応していましたが、この事故では海外旅行保険に関して、ある事実が浮き彫りなりました。
要約すると、、、
・海外旅行保険に加入者と未加入者で、現地での対応が分かれてしまったようだ
ということです。
旅行会社への取材により、事故の現場やレスキューの現場、病院では少なからず混乱があったようで、目の前で血を流して苦しんでいる人がいるのに、海外旅行保険未加入だから治療費はどうするんだ、とか、そういったことらしいです。
『報◯ステー◯ョン』の制作会社はそれを聞きつけたらしく、電話を取った私にこう問い合わせてきたのです。
海外旅行保険の落とし穴についてお話をお聞きしたい。
ちょうどこの事故の2カ月ほど前に、私は「海外旅行保険の店頭での加入率アップのためにどうすればよいか」というテーマで保険会社や旅行会社に取材して記事を書いていました。
変な問い合わせを編集長に直接持っていっても叱られるだけなので、ちょっとだけ話しを聞いてみることに。
「今回のアメリカでのバスの事故を受けて、海外旅行保険の落とし穴があったらしいけど、それを教えてほしい」
とのこと。
しかし、この事故で明らかになったのは、保険加入者と未加入者で現地での対応が分かれてしまったという事実のみ。
保険の内容そのものは議論されていません。
それを伝えると、
「いや、海外旅行保険の落とし穴がですね…」
ひょっとしたらと思い、
「救援者費用を無制限にする特約を付けているかどうかですかね? 死亡時の遺体引き取りに遺族が向かう費用を無制限でカバーしてくれる特約もありますから、そういうのなら落とし穴と言えなくもないかもしれません」
と伝えると、、、
「いや、そのー、海外旅行保険の落とし穴について…」
うーん、噛み合わない(笑)
優しい私(笑)はさらに、、、
「クレジットカード付帯の海外旅行保険だと、現地でキャッシュレスで治療を受けられない場合もあって、旅行者が高額な治療費を一旦立て替えなければいけない、という話ですか?」
それでもこの制作会社の方は「いや、海外旅行保険の落とし穴について…」と続けるではありませんか!
さすがにこっちもイライラしてきまして、「保険の細かい内容のことでしたら保険会社に聞くのが一番手っ取り早いですよ」と言い、私が取材でお世話になった大手保険会社の海外旅行保険担当の方を教えてあげて電話を切りました。
「落とし穴」という言葉が先走っちゃって、何が問題点なのか理解せぬまま取材しているのが見え見えでした。
あの番組はもともとあまり好きではありませんでしたが、取材の姿勢の一部を知ってしまうと、今後も視聴することはないだろうなと強く感じた次第。
ちなみに私は保険会社の回し者ではありませんが、海外旅行保険は加入しておいた方がいいですよ!
お守りがわりに一番安いやつで構わないので、任意保険に加入しておくことをオススメします。
そういう話はまた別の機会にでも。
それでは今日はこの辺で。