お土産が観光地を疲弊させていた?
旅行先での楽しみに「ショッピング」を挙げる人も少なくないと思います。まあ、職場に買っていくお土産を買わなきゃ、となれば、楽しみは苦しみへと直滑降で落ちていくわけですが…。日本人の悲しいサガですな。
かつて取材でマルタ共和国を訪れた際には、名物の銀細工のピアスを後に妻となる彼女へのお土産として買いました。すごく喜んでくれましたし、今でもたまに着けてくれているので、贈った私も救われたというものです。
もう10年ほど前になりますが、北海道の小樽に取材で行ったことがあります。目的は、「小樽雪あかりの路」というイベントの火付け役で、国土交通省から「観光カリスマ100選」に選ばれた方の講義を取材するというもの。彼へのインタビューで、かつての小樽が悩まされていたことのひとつに「お土産」が含まれていたのです。
1980年代から1990年代半ばにかけて起こった小樽ブームの頃、「好きです!小樽」みたいなグッズが小樽市内のお店に溢れた時期がありました。でも、これを企画・製造するのは小樽市の業者ではなく、場合によっては北海道の業者ですらないこともあったそうです。そのため小樽経済への効果は薄く、訪問者数が多い割に疲弊していく市内の業者が増えていくことに。
観光客が買えば買うほど現地が疲弊する。そんな理不尽さをどうにか打開できないか。そうして企画されたのが、小樽雪あかりの路だったそうです。このイベントのコンセプトは「オール小樽」。できる限り小樽市内の業者に参加してもらい、参加してくれたら少しでも恩恵が受けられるよう配慮したそうです。それと同時に市民へもイベント参加を呼びかけてまわった時の話を聞かせてもらいました。
ひと昔前の「ふるさと創生事業」では、自治体に1億円をバラまくという手法をとり、ある自治体などは1億円分の金塊を購入したとか。福島県喜多方市の「蔵とラーメンの町」というのは数少ないふるさと創生事業の成功例です。
さすがに近年の町おこしで金塊を買うようなところはありませんし、地元にどうやって利益を還元するかが熟慮されていると思います。いち早くそれに気づいた小樽市が成功しているのは、偶然ではないのでしょう。
華々しい札幌雪まつりとは違い、ロウソクの炎がゆらめく静かで温かい癒やしのイベントとして、今ではすっかり小樽に定着しました。
雪あかりの路は今年も多くの観光客を集めて終了。(記事掲載のタイミングが悪くてスミマセン!)
タイミングの悪さの罪滅ぼしとして、当時の写真を何点かアップしておきます。
運河にはガラスの浮き球にロウソクを入れたあかりも
運河沿いでは盛大にロウソクがともる
廃線となった鉄道跡を利用した展示
それでは今日はこの辺で。