タビグルマ雑記帳

仕事で触れることが多い「旅」と「クルマ」を中心に、いつも感じていることを書き綴っています。

クールジャパンとインバウンドの陰で…

2010年頃でしたでしょうか。日本のマンガやアニメに代表されるポップカルチャーを「クールジャパン」と名付けて海外に広めようという動きが出てきましたよね。そのくらいのタイミングで経済産業省にクールジャパン室とかいう部署ができ、国を挙げてクリエイティブ産業を後押ししようというムーブメントが起きました。

 

外国人にとっては、読んだマンガや見たアニメが制作された日本を訪れるというのは、一種の聖地巡礼のようなもの。旅行業界が推し進めるインバウンド振興にとっても、クールジャパンは歓迎すべきものだと思います。

 

先日もエイチ・アイ・エスが大阪・心斎橋の訪日外国人案内所を日本のポップカルチャー情報の発信基地としてリニューアルし、「OSAKA INFORMATION CENTER OTA(オタ) BASE(ベース)(宅男基地)」としてオープンしました。

 

おそらく多くの外国人で賑わうでしょうし、旅行業界にとってもマイナスにはなりません。いいことずくめですね。

 

と言いたいところですが、「クールジャパン政策」には大切な視点が抜けているように思います。

 

それは、絶望的にアニメ業界が絶望的に儲からない産業構造になっているということ。

 

私の友人に、大手アニメ制作会社で働いている男がいるのですが、彼いわく「テレビシリーズの作品を手がけても、儲かるのはテレビ局と広告代理店だ」と嘆いていました。

 

その結果、10年近く前からアニメ制作業界で当たり前のように行われるようになったのが、制作業務の海外委託です。

 

アニメ番組のエンディングを注意深く見ると、制作スタッフ、特にアニメーターの多くが韓国人や中国人であることがわかります。私の友人は、制作進行プロデューサーとして当時、日本と韓国を行ったり来たりしていました。商習慣や仕事の進め方に対する考え方の違いから、ずいぶん悩んでいましたっけ。

 

日本経済の救世主のように持ち上げられているアニメ業界ですが、このように産業としての空洞化が進行中だということは意外と知られていません。10年後、20年後に国内に日本人アニメーターがいなくなるのではないかと危惧する声もあるほどです。

 

友人によると、スタジオ・ジブリだけは別物らしいのですが、それは若者の「ジブリの仕事ができるなら薄給で、いや無給・無休でも構わない!」という「熱い想い」におんぶに抱っこしているからだとか。何年か激務を続け、ふと我に返った瞬間に業界を離れてしまう人も相当数いるらしいです。

 

それから、日本では著作権の保護に対する甘さも指摘されており、これもアニメ業界を苦しめている一因だと言われています。(私はこのへんのことは詳しくないので、この程度の書き方でとどめておきます)

 

インバウンドは旅行業界にとって新たなビジネスチャンスではあります。しかし、アニメ制作現場の窮状を知ると、ポップカルチャーをフックにして外国人旅行者を呼び寄せようというのは、苦しいアニメ業界のフンドシで相撲をとるようなものに思えてきます。

 

日本のポップカルチャーを産業として国が後押しするのなら、経産省にはこういった実態についても踏み込んでもらいたいなぁ。

 

それでは今日はこの辺で。