タビグルマ雑記帳

仕事で触れることが多い「旅」と「クルマ」を中心に、いつも感じていることを書き綴っています。

募集型企画旅行と登山は相容れない性格では?

近年の登山ブームで、ちょっと年齢が高めの方々と山で会うことが多くなりました。というか必ずお会いします。

 

特に60歳を過ぎたように見える集団と登山道ですれ違うことや、追い抜くのに待っていてもらうことが増えています。(我々は3人のコンディションが良好であれば、基本的にコースタイムよりもペースが速めですから、当然そうなります)

 

そういう集団の場合、旅行会社のタグやステッカーをザックや靴に着けており、「ああ、登山ツアーに参加している人たちなんだ」とわかります。そして、大抵は先頭と最後尾に山岳ガイドが付き、先頭のガイドがペースを作り、最後尾のガイドは追い抜きなどがある場合に声をかけて集団を止める、といった役割分担があるようです。

 

ただ、集団は15人前後であることが多く、狭く曲がりくねった登山道ではコントロールしきれていないケースも散見されます。ガイドを一般のツアーの添乗員のように考えている参加者もちらほらいるそうです。山に入ったら自分の身は自分で守るしかないのですがね。

 

余談ですが、一昨年、御嶽山で噴火があった後、私たちは3人で再確認し合いました。

 

「万が一のことがあったら最優先で自分の身を守る。他の2人を助ける必要はなく、自分だけ助かっても気に病む必要はない」と。

 

集団によっては、かなりガイドに負担をかけているように見える場合があります。事実、「うんざり」と顔に書いてあるガイドとすれ違うことも1度や2度ではありませんでした。山での挨拶「こんにちは」の声が小さいこと小さいこと。死んだ魚みたいな目でした(笑)

 

そして一番面倒だったのは、穂高岳山荘から奥穂高岳山頂への登り始めの絶壁。私たちが降りてくる頃に、15人くらいの大集団が登り始めたのです。私はこの山行中、終始コンディションが良好で、一番早く降りてきたので彼らとすれ違ったのは、ハシゴや鎖をクリアしてからの場所でした。

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よく見ると中央やや上にハシゴが見えます。これは登る前の写真なので集団はいませんでした

 

それでも大集団とすれ違うときは、私が少し脇に避けたのですが、なにせ狭いし反対側は絶壁だし。私の目の前でルートを塞いでいるのに「行ってください」って言われてもねぇ(笑)

 

かわいそうだったのは、ちょっと遅れていたがためにハシゴの上で待たされてしまった友人2人でした。2800mを超える標高の稜線では、風も冷たいですし、待つだけでも消耗します。(本来すれ違うことができないルートで、順番に登る人と降りる人が行き交う場所です)

 

極めつけは、そのご高齢の集団がハシゴを登る際にカラビナで命綱をかけながら、ゆっくりゆっくり登っていたこと。安全を確保しながら登るのは大事ですが、それが15人続くわけです。さすがに降りてくる人(待っている人)が増えてきたことに気づいたガイドが集団を半分に分けましたが、それでも8人と7人。

 

これは賛否両論あるところだと思いますが、私は「命綱を使うということは、3点支持に不安がある」ことの証だと思います。そういう体力レベルの人たちを15人もいっぺんに面倒見るのは不可能でしょう。

 

私の隣でその様子を見上げていた熟練者風の男性も、「ここであんな人数をいっぺんに登らせちゃダメだよ…」とつぶやいていました。

 

そもそも募集型企画旅行の約款にある旅程保証の考え方と、行程が天候に大きく左右される登山は、相容れない性格なのだと私は考えます。この集団を率いていたガイドさんも、旅程保証の関係でその日のうちに全員を山頂に連れて行かないとマズかったのでしょう。でも、結果的にツアー参加者だけでなく、他の登山者に対しても影響が出てしまっていました。しかもこれは金曜日。連休になればもっと多くの人が行き来します。せめて奥穂高槍ヶ岳のような山頂へのアプローチは、安全を考えて3人ずつくらいが上限じゃないでしょうか。

 

最近の登山ツアーでは、旅行会社が指定する他の登山ツアーに参加し、ガイドが体力的に問題なし、とお墨付きを与えた人のみが奥穂高槍ヶ岳といったワンランク上のレベルのツアーに参加できる、という認定制みたいなものが出てきています。旅程保証についても、募集要項に必ず「但し書き」を付けて、安全に関するガイドの支持に従うことを約束したうえで旅行契約を成立させているようです。

 

とはいえ、ツアーで来ようが個人で来ようが、山に一歩でも足を踏み入れたら、全責任は自分にあります。客観的に自分の実力・体力を判断し、参加できるかどうかを決めるのが何よりも大切なこと。少しでも不安がある場合は、「行かない」「無理しない」という勇気ある決断も必要だと思います。私たちだって安全を最優先し、奥穂高登頂に5年を費やしたわけですから。

 

そうやって安全第一に考えて、みんなで山を楽しむことができれば、愛好家にとってこれ以上の喜びはないと思います。

 

それでは今日はこの辺で。