旅行産業とイノベーション
9月に開催されたツーリズムEXPOジャパンで行われた「グローバル観光フォーラム」の基調講演で、ちょっとした笑い話が盛り込まれていましたので、今日はそれを紹介しておきます。
基調講演は、国連世界観光機関(UNWTO)のタレブ・リファイ事務局長と、世界ツーリズム協議会(WTTC)のデイビッド・スコースィル理事長によるものでした。
講演の中で、リファイ事務局長は「旅行産業がイノベーションに消極的だ」と話し、その一例をかつてスコースィル理事長と雑談した際の内容として次のように語りました。
スーツケースに2輪のキャスターが付いたのは、人類が月面に降り立ったよりも後だった。4輪キャスターの登場となると、さらにもっと後だった
笑い話なのでしょうが、旅行業界の先進技術に対する後ろ向き加減を的確に表現するエピソードじゃないでしょうか。
これが50年前にやっと実現した技術だそうです(笑)
私が旅行業界誌から身を引いたのが2011年3月。6年ぶりにこのイベントの取材をしましたが、6年前と語られていることがあまり変わっていないように感じました。
「ネットとリアル店舗の関係」だとか、「旅行会社の安売り体質が問題だ」といった話題です。
まだそんなこと言ってんのか、と。
6年もの間、一体何をしていたのでしょう。
消費者の方が先端技術を駆使して賢く旅をしているっていうのに。。。
「旅行市場の回復の波に旅行会社が乗れていない!?」で書いたように、このままでは旅行業界は取り残されていくばかりです。
このブログではクルマと旅行がテーマですが、日進月歩のクルマの世界とのあまりのギャップに書いていてびっくりします。
6年前には、一部の高級車や一部のメーカーが採用していた自動ブレーキ(と呼びたくはありませんが)をはじめとするドライブアシスト機能が、今では軽自動車に搭載される(簡易版とはいえ)ほど普及しています。
また、15〜16年前の2000年前後であれば、クルマの施錠・開錠をリモコンキーで行うのは、中級以上のクルマのアドバンテージだったはず。今や標準装備に近いです。
旅行産業は「国の基幹産業になる」ことを標榜していますし、その可能性は大いにあると私も思います。
しかし、今のように先進技術に対する鈍感さ、変化の必要性を語りながら変化しない体質があるうちは、基幹産業にはなり得ないのではないでしょうか。
辛口な内容となりましたが、ある意味では私からのエールでもあります。
それでは今日はこの辺で。