久しぶりの大型経営破綻:「てるみくらぶ」騒動に思う
先週から騒々しかった、格安ツアーをメインに取り扱う旅行会社「てるみくらぶ」の騒動ですが、社長が記者会見をして経緯を説明しました。
もちろん私も知ってはいましたが、同社のツアーで出発済みの方がいることを考えると、ブログなどで安易に不確定情報を流すべきではないと考え、静観を決め込んでおりました。
結局は資金繰りの悪化ということになりますが、負債総額は150億円、影響を受けるとされる顧客は8〜9万人になるといわれています。
格安ツアーということは、時期的に学生の利用者も多いでしょうから、初めての海外旅行という人もいたはずです。
楽しい旅行のはずが一転、帰れるかどうか、泊まれるかどうかわからなくなる、という不安な状況ですが、なんとかみなさん無事に帰ってきてもらいたいものです。
騒動の詳しい経緯はこちらからどうぞ。
今回は、この騒動について感じたことを書いてみたいと思います。
説明するタイミングが遅い
上の記事では、代表の山田氏が「最後までがんばろうとしたことがかえってご迷惑をかけてしまった」みたいな言い訳をしたうえ、「未出発の人も出発しないでほしい」とのたまう始末。
23日に資金調達ができないとわかった時点で発表せず(記事にある「告知」は、SNSなどの情報を見る限り「航空券が使えないかも」というメールを送ったことを指すようです)、会社としての公式発表は今日までずれ込みました。
てるみくらぶのウェブサイトにも、やっとこういった案内が掲載されました。
それでも、この4日間に出発してしまった人に対し、どれだけ迷惑がかかるか真剣に考えなかったのでしょうか。
下手すりゃ現地で泊まる場所がないわけですよ?
山田氏は発券済みの航空券なら「問題ないと思う」って言ってますが、他人事ですよね。現地の係員の対応によっては帰ってこれないかもしれないのに。
ダメになる会社の社長って、危機的状況のときでも他人事ですよね。
私の体験では「俺が言うとおりにやればいいんだ」→「俺の言うことを従業員が聞かない」→「俺は騙された」という俺様三段活用のすえ、さらにわけわかんないこと言い始めるし。
閑話休題。
今日になってしまいましたが、この山田千賀子氏は記者会見で説明を謝罪の言葉を述べただけマシなのかもしれません。
旅行会社への不信感が増すことに
てるみくらぶの破綻の要因となったのは、少なくとも彼らの主張では「航空会社やホテルなどの直販の増加」だそうです。
私に言わせりゃそんなもん10年前からわかってただろうが!ですけど。
こういうことがあると、旅行業界に対する不信感は募るもの。
しかも、物心付いた頃からネットが当たり前のようにある若い世代は、旅行会社を利用せず、航空会社やホテルに直接申し込むようになるかもしれません(っていうか、もうそうやって旅行してるよねw)。旅行においても、そういった消費行動が当然になる日も遠くないと思います。
また、てるみくらぶは日本旅行業協会(JATA)に加盟する旅行会社でしたから、JATAの弁済制度が適用されます。
が、その上限は1億2000万円。
てるみくらぶの負債額150億円のうち、80億円ほど(訂正:99億円ほど)が旅行者に対して弁済義務がある額だそうですから、JATAの弁済制度を利用しても、手元に返ってくるのは微々たる額となってしまいます。
今回の騒動で、この上限があることも広く知られることになりましたし、弁済額の上限を超えた負債を抱えて倒産されたら、泣き寝入りするしかなくなってしまうこともあらためて周知されてしまいました。
こんなんじゃ旅行会社を使う人が減って当然ですわな。
海外旅行への悪印象
繰り返しになりますが、てるみくらぶのツアーで初めて海外旅行をする、という人もいたはずです。渡航中の方が3000人くらいいるようですからね。
初めての海外で散々な目に遭った人は、海外旅行に対して悪い印象を持持ってしまうでしょう。
「あんな不安な思いをするなら沖縄とか北海道でいいや」ってなっちゃいます。
堅実に経営している旅行会社から見れば、「余計なことしやがって!」と、憤懣やるかたない思いでしょうね。
トラベルボイスの記事にもありますが、リーマンショック以降では最大規模の旅行会社の経営破綻となったてるみくらぶ騒動。
私が旅行業界誌の記者だった頃、ちょくちょく記事にしていた会社(私は担当ではありませんでしたが)ですから、業界内でも名前は知られていました。
格安ツアーで成功した会社ですが、いつまでもそれが続くと勘違いしてしまったのかもしれません。
経営者は好調な時ほど次の一手を考えなきゃいけないというのを教えてくれた事例となりそうです。
それでは今日はこの辺で。